平成27年1月1日からの相続税見直しに伴い、贈与税も改正されました。若年世代への資産の早期移転を促進する観点から、20歳以上の人が直系尊属から贈与を受けた場合は、税率が軽減されます。
相続税の負担を減らす対策の一つとして生前贈与を行い、早いうちに資産を子供などに贈ることで、財産を圧縮することができます。
贈与税には「相続時精算課税」と「暦年課税」のふたつがあり、生前贈与を行う際は、それぞれの特徴や注意点をよく理解する必要があります。
以下に、それぞれの内容をまとめておりますが、贈与に関しましては実務上、注意すべきポイントがございますので、専門家にご相談されることをお勧めいたします。
改正前 | 改正後 | |
---|---|---|
贈与者:65歳以上の親 受贈者:20歳以上の子(推定相続人) |
贈与者:60歳以上の親または祖父母 受贈者:20歳以上の子(推定相続人)および孫 |
(注)孫の場合は原則として相続税の精算時(申告時)に
2割加算の対象となりますので注意が必要です。
①贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、この制度を選択する旨の届出書と贈与税申告書を税務署に提出します。
※ 申告期限を過ぎてからの提出では、相続時精算課税制度を利用した贈与は適用できませんので、提出期限内に必ず提出してください。
②受贈者(財産を受け取る人)は、相続時精算課税制度を父、暦年贈与を母と贈与者(財産を贈る人)別々に選択できます。
③一度選択すると相続時まで継続して適用され、撤回できません。
贈与財産の種類・贈与期間と1回の贈与金額・贈与回数に制限はありません。
①贈与財産の価額の合計額が2,500万円以下の場合・・・・贈与税額0
②贈与財産の価額の合計額が2,500万円超の場合(贈与財産の価額の合計額-2,500万円)×20%=贈与税額
③相続時に相続財産と贈与財産を合計して、計算した相続税額から納付済の贈与税額が控除されます。(控除しきれない金額は還付されます。)
④相続財産と合算する贈与財産の価額は、贈与時の時価によります。
贈与者、受贈者ともに制限はありません。
贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告書を提出します。
(期限後申告の場合は延滞税、加算税が課されます)。
特に制限はありません。
{贈与財産の課税価格-基礎控除(110万円)}×税率-速算表の控除額=贈与税額
改正前 | ||
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | 0円 |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,000万円超 | 50% | 225万円 |
改正後 | |||||
一般の贈与の場合 | 20歳以上の者が直系尊属から 贈与を受けた場合 |
||||
基準控除後 の課税価格 |
税率 | 控除額 | 基準控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | 0円 | 200万円以下 | 10% | 0円 |
300万円以下 | 15% | 10万円 | 400万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 | 600万円以下 | 20% | 30万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 | 1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 | 1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 | 3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 | 4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 | 4,500万円超 | 55% | 640万円 |
①将来値上がりが予想される財産は有利 (相続が発生した場合に相続財産に加算される贈与財産の価額は贈与時に時価によるため。)
②相続が発生する前に贈与者の意思で財産分割・移転ができる。 (ただし、遺留分の考慮が必要です。)
③アパート等の家屋の贈与の場合は、贈与後の賃貸収入が受贈者の不動産収入となり、贈与しない場合と比較して贈与者(将来の被相続人)の相続財産となる現金が増加しない。
①相続開始後には相続財産に加算されるため、将来値下がりとなる財産は要注意
②相続発生時に相続時精算課税制度を利用した贈与については、贈与時の時価(通常は贈与申告書に記載した財産価額の合計額)を相続財産価額に加算して相続税額の計算を行います。
⇒⇒何年前でも必ず加算対象となります。
③アパート等の家屋の贈与の場合に、アパートローンの負担を条件に行う場合は負担付贈与となり贈与者、受贈者ともに税金が発生する可能性があるので注意が必要です。
○相続・遺贈により財産を取得しない相続人や相続人以外の者は贈与申告で課税関係が終了するので、生前に親族等へ相続財産の分散が可能である。
※相続等により財産を取得する相続人等は、相続開始前3年以内の贈与財産があれば、相続財産に加算して相続税額の計算を行う必要がある
○累進課税の最高税率(55%)が適用となるのは、3,000万円又は4,500万円超のため不動産等の高額財産の移転には高額な贈与税が課税される。
※相続時精算課税・暦年贈与のいずれの贈与でも、贈与物件が不動産の場合には、贈与税以外に登録免許税・不動産取得税・契約書の印紙税等の税金が課税されます。
婚姻期間20年以上等の諸条件を満たせば、夫から妻へ、又は、妻から夫へ居住用不動産(その居住用不動産購入資金を含む)の贈与について従来の基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除があります(2,110万円まで贈与税が課税されません)。
⇒⇒同一配偶者間では、一生に一度しか適用されません。
贈与については、他にも注意すべき点がございます。
もし、贈与をお考えであれば、初回の相談は無料で行っておりますので、お気軽に当事務所までお問合せ下さい。
お役に立つアドバイスをさせていただきます。
祖父母や父母から、孫などへ「教育資金の一括贈与」を行った場合、従来は課税されていました。
しかし、平成25年4月1日~平成27年12月31日の限定措置として、信託銀行等の金融機関に信託した場合には、受贈者1人につき、1,500万円まで非課税になりますので、お孫さまへの教育資金の贈与を考えていらっしゃる方は、「一括での贈与」をご検討いただく良い機会です。
(平成27年12月31日までに資金を拠出する必要があります。)
贈 与 者 | 曾祖父母、祖父母、父母など(受贈者の直系尊属) |
受 贈 者 | 子、孫、ひ孫など(贈与者の30歳未満の直系卑属) |
贈与の対象になる資産 | 教育資金に充てるための金銭等 ①学校等に直接支払われる金銭等 入学金、授業料、入園料、保育料、入学試験検定料など ②学校等以外に支払われる金銭等のうち一定のもの 教育、スポーツ、文化芸術活動に関する指導者に支払う費用等 |
非課税限度額 | 受贈者1人につき1,500万円(上記②の場合は500万円が上限) |
申 告 | 取扱金融機関経由で「教育資金非課税申告書」を提出 |